私は40代の男性です。ライトノベルという名前が生まれる前、アニメ調のイラストを多用した若者向け小説がヤングアダルトというジャンルで呼ばれていたころから、ライトノベルやその関連作品を楽しんできました。

今回紹介する「グランクレスト戦記」は、ライトノベルジャンルの黎明期を代表する作品のひとつ「ロードス島戦記」を書いた水野良さんの最新シリーズです。

その魅力や、今読むべき理由などについて紹介させていただきます。

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『グランクレスト戦記』とは

「グランクレスト戦記」は、中世ヨーロッパ風のファンタジー世界を舞台にした戦記物語です。国と国、領主と領主が時に争い、時に手を組んで大陸の覇権を争う骨太のストーリーが展開されます。

本作はいわゆるファンタジー小説としてストレートかつ王道な作りで、複雑な設定や覚えなければいけない背景知識はほとんどありませんが、最大の特徴が「カオス」の設定にあります。

世界に満ちるカオスは、自然災害や異世界の魔物の姿をとって人々の生活を脅かす存在です。

しかし、人間の中にはカオスの力を操り不思議の術を使う魔法師、カオスを自らの体に取り込み超人的な身体能力を発揮する邪紋使い、カオスの力を鎮めることができる聖印(クレスト)を持つ君主という3種の能力者がいます。

その中でも君主は、他の君主を倒ることで聖印を強化し、その強さに応じた領土を治める権利を得られるため、名誉や権力を欲して互いに争う戦乱が生まれていました。

そんな中、「人々を守る」という本来の理想を追い求める一人の若き君主テオと、彼の理想に共感する魔法師の少女シルーカの出会いをきっかけに、世界が大きな流れにのみこまれていくという物語です。

非常にテンポの良い王道ストーリーが好き

本作の一番の魅力は、主人公テオ、そのパートナーとなるシルーカを中心とした登場人物も、ストーリーもひたすらにまっすぐで、余計な寄り道が全くないことです。

テオは、圧政や災害、戦争に苦しむ民を救うという目的のためにまい進し、シルーカもそれをサポートし、共に闘う仲間たちも自分たちの役割を戦場でも物語上でもきっちり果たしていきます。

主人公が悩んで100ページ使ったりとか、ちょっとしたすれ違いから仲間が反目して仲直りするのに1巻まるごと使ったりとか、そういった間延び感は一切ありません。

もちろん物語が面白く、キャラクターが魅力的なことは前提として、1巻読んだら1巻分きちんとストーリーが展開し、テンポよく楽しめる点が私は大好きです。

作者の水野さんはもともとゲームデザイナーですので、非常に理詰めで物語を構成している印象があります。

1巻で終わった場合、4巻で終わった場合、7巻で終わった場合…といった具合に場合わけして、クライマックスを何パターンも用意していたようです。

その職人技ともいえるキャラクター造形とストーリー構成が本作を王道たらしめている要因だと思います。

日常要素の描写がないのが物足りないと感じる人もいるかも

上記に触れたとおり、無駄のないところが本作の魅力ではありますが、その分、いわゆる日常パートやキャラクター同士のたわいない掛け合いなどの要素はほとんどありません。

非常に魅力的なキャラクターが多数登場するものの、ほぼ戦場か会議での姿しか描かれないので、個々の掘り下げという面で物足りなく感じる方もいると思います。

また、ストーリーについても、重要と思われるエピソードが特に驚くほどあっさりと終わってしまったり、あまりにも順調に進みすぎたりするので、作業感というか決まり切ったシナリオを読まされている感じは多少あります。

そういった、キャラクターの掘り下げや日常要素を求める方には、あまり向いていない作品かもしれません。ただ、外伝などで補完されている部分もあるので、トータルでみればそれほどの欠点ではないと思っています。

2018年1月からのテレビアニメ化が決定

本作をいまお薦めする理由ですが、2018年1月からのテレビアニメ放映を控えているということがあります。2クールで、半年にわたって放映し本編のラストまで描くとのことなので、原作ファンにとっては期待大のアニメ化となっています。

すでに公式サイトでは主要キャラクターのボイス入りPVも公開されているので、視聴すでば作品の雰囲気を感じ取ることができるのではないでしょうか。

同時に、原作小説は2017年10月に最新9巻発売となり、次の10巻での完結が宣言されています。(雑誌での連載はすでに完結済み)

私の好みの話になってしまいますが、発表時期や完結時期があいまいになりがちな創作物の世界において、予定通りの巻数で予定通りのストーリーを完結させるということは、とても素晴らしいことだと思っています。

人気作であるほど長期化し、終わりが見えなくなる傾向がある昨今、一気に読めるコンパクト感も、最近では珍しく、新鮮に感じます。

なにしろ、世の中には現実時間で30年が経過し、中学生が40代になってもいまだ完結しない「戦記」もありますので…。

来年のアニメ終了に合わせて小説版も最終10巻が刊行される予定なので、今このタイミングで1巻から読み始めれば、原作小説→アニメ→完結と、最初から最後まで最高潮のテンションで駆け抜けることができるのです。

上記のように、すでに完結までのロードマップが見えている本作ですが、世界観のベースになっているTRPG「グランクレスト戦記」から小説版とリンクするリプレイ作品が発売されているほか、小説の外伝なども予定されているので、本編終了後も広がりが期待できる作品です。

まとめ

今回紹介した「グランクレスト戦記」は、ライトノベルの開祖の一人でもある水野良さんの最新作ということもあり、オールドファンにとってはどこか懐かしく、そして新しいファンの方には、異世界転生もの主流の現在、逆に新鮮に感じられる作品だと思います。

テオとシルーカを中心とした魅力的なキャラクター、聖印をめぐる争いを軸とした骨太のストーリー、決して停滞しないテンポの良い展開がおりなす、古くて新しい王道戦記ファンタジーの世界を、ぜひお楽しみください。