私は、三十代の女性です、平岩弓枝先生の歴史小説「御宿かわせみ」シリーズを紹介します。

この作品に初めて出合ったのは、まだ学生の頃。母の本棚にあった、かわせみの文庫版がキッカケでした。

何気なく手に取ってパラパラめくったら、なんとなく気になり……そのまま読んで、面白さの虜になりました。幸いなことに全巻揃っていたので、一冊ずつ読破。

読み終わる頃には、すっかり本作のファンになっておりました。

ファンが多い傑作シリーズですが、あまり周りに、読んでいる人がおらず……。

作品の魅力や、お勧めしたいことをご紹介させて頂きます。

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「御宿かわせみ」とは?

「御宿かわせみ」は、平岩弓枝先生の代表作。

人情時代小説、とでもいうべきシリーズで、もう何十年も連載しています。

無印シリーズである江戸の話は完結済みで、現在は成長した子供達が主役の「明治編」が不定期連載中。

ですがここでご紹介するのは、与力の弟・東吾と、恋人のるいを中心とした、幕末の無印シリーズです。

紹介するのは、幕末の無印シリーズ

舞台は大川沿いにある小さな宿屋「かわせみ」。

ヒロインのるいさんが営むこの宿を中心に、泊り客を中心とした人々の起こす事件や、恋模様を描いていきます。

平岩先生ならではの、読みやすく美しい文体や、季節の花や江戸の風物など、当時の生活が垣間見えるような描写も魅力です。

親子の情愛や切ない恋心、人間の愚かさが引き起こす事件など、現代と変わらない人の姿を情感たっぷりに描いています。

細かな心理描写が魅力

一番の魅力は、やはり細やかな心理描写でしょうか。

特に切ない恋心や、親子の情愛を書かせたら、平岩先生の右に出る者はいないのでは?というほどの素晴らしさ。

「雨月」を始めとした、兄を慕う弟や、弟を案じる兄などの兄弟もの。

「白萩屋敷の月」などの、恐ろしいまでの純粋な思慕や、恋心。

「秋の蛍」などに見られる、娘を想う父親や、親を慕う娘の姿。

血が繋がっていようといまいと、相手の為に命をかけてしまうような、強い情愛を説得力を持って描いています。

時代が幕末だからこそ、素直に作品世界に入れる

心理描写や事件は、現代にも通じるものなのですが……時代が幕末だけに、ほどよい距離感があって、素直に作品世界に入ることが出来るのも、魅力のひとつかと。

牡丹や萩などの草花、鈴虫などの虫。障子や簀戸など、季節を感じさせる細かい描写が、登場人物達の生活を、リアリティのあるものにしています。

また、どうしようもない嫌なヤツがいる一方で、信念に殉じる潔い人の姿も描いており、人の善意を信じたくなる、そんな気持ちにさせられます。

長編が好きな人向け

時代小説なので、活字に馴染みのない方、もしくは時代小説に興味がない方には、お勧めしづらいかもしれません。

また何十冊も続く大長編シリーズなので、手を出すのに躊躇する方もいるかも……。

小説が苦手な人は他のメディアで楽しむんでもよし

でも、大丈夫。

メディアミックス化されているので、小説が苦手な方は、ドラマ版から入ることも出来ますし(オンデマンド等で見られる模様)、DVD化はされていないでしょうが、舞台にもなっています。

朗読CDも、何枚も発売しています。

1話完結なので、どの巻から読んでも大丈夫

また大河シリーズで、冊数が多いですが、基本的には一話完結。

連作短編のようなシリーズなので、どの巻から読んでも大丈夫です。

また一冊のうち、どの話から読んでも、ちゃんと完結する短編なので、問題ありません。

活字が大きい新装版の文庫も出ていますし、手を出し易い作品です。

生き生きとした登場人物たち

魅力的な部分は多くありますが、特筆すべきは、活き活きとしたキャラクターでしょうか。

親しみを感じさせる、けれどリアルな人物達……それが、かわせみの大きな魅力です。

主人公のキャラクターは?

まず、主人公の東吾。明るく闊達な性格で、頭脳の冴えは一流。

剣の腕もピカイチで、数々の難事件を解決する逸材です。

次男坊の冷や飯食いですが、それを苦にしない大らかな性格の持ち主。

ちゃんと職を得て、沢山の生徒に剣術を教えています。

ヒロインは強い信念を持った女性

ヒロインのるいさんは東吾の恋人で、美人で優しく、芯の強い女性。

でしゃばらず、かといって気が弱いワケではなく……言うべきことは言う、やるときはやる女性です。

身分違いの恋にも負けず、町人になってでも恋を貫こうとする、強い信念を持っています。

素人ながら、宿屋を開いてしまうほどの行動力の持ち主。

平岩先生が思う、理想の女性なんだろうな……と思う人物です。

「人間の善意」を具現化したような主人公の親友

そして東吾の親友、同心の源三郎。

生真面目だけど信念が強く、決して諦めずに事件を追う、粘り強さの持ち主。

目下の者に優しく、思慮深く、決して偉ぶらない彼の言動には、度々感服します。

「人間の善意」を具現化したようなキャラクター。

頼もしい老人「喜助」

るいが子供の頃から仕える、番頭の嘉助。

実は鬼と呼ばれた腕利き同心に仕えた、元岡っ引き。

年の功である穏やかさと落ち着きに、昔取った杵柄の腕と勘を持ち合わせた、頼もしい老人です。

こんな人がいれば、宿屋は安泰だろうなあ、と思わせてくれるような。

一方、主人の幸せを願い、孫に甘い祖父でもあるという、優しい一面も魅力。

「古き良き、日本の男性」という感じでしょうか。

憎めない不思議な魅力を持った「お吉」

最後に、かわせみの女中頭・お吉。

おしゃべりでオッチョコチョイ、でも主人想いで世話焼きという、憎めないキャラクター。

欠点が多いのに愛される、なんとも不思議な魅力を持っています。

まとめ

魅力的なキャラクターに、美しい四季の風景。

江戸情緒を絡めながら、人情たっぷりに人の営みを描く……。

今も昔も変わらない人の姿を、江戸時代というフィルターを通すことで、まろやかに感じさせてくれる。

そんな、不思議な魅力の作品だと思います。

また平岩先生の書かれる、耳に快い(活字ですが……)美しい日本語の数々。

読んでいると、知らない「昔の日本」に触れられるような、そんな気持ちがします。

没頭しているひととき、日常を忘れさせてくれる……そんな素敵な読書体験をくれる、小説です。