漫画家・萩尾望都さんと言えば、コミック界では余りにも有名な女性漫画家で多くの方に認知されていると思います。

私(男性です)が萩尾望都さんの作品に初めて触れたのは20歳を過ぎた頃で、一読して感じたのは「女流でここまでSFやれる人が居るんか!」という衝撃です。

それまで少年向け・青年向け雑誌しか読んだ経験が無かったこともあり、全く免役が無い状態で萩尾望都さんの作品に触れてしまった事になります。

それが幸か不幸かと言えば……何とも表現に苦しみます。

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話すのは漫画家・萩尾望都さんのSF要素

ここでは”ポーの一族”のような、既に世界全国のファンを感動させ、語り尽くされている程の超メジャー作品については触れません。

またgoogleで調べればすぐわかるような解説は致しません。

お話したい内容は個人的に感銘を受けた「SF」要素についてです。

十数年もの期間を要してもまだ足りない

1970年代初頭(私が生まれる前です)には既に名作を生んでいた事を知り、萩尾望都さんの過去の作品を探して読んでいます。

1作品づつ咀嚼する必要があるので、十数年もの期間を要してもまだ足りません。

告白すると、”バルバラ異界”のような21世紀に入ってからの作品に関しては、まだまだ追いつきません。

SF作家・光瀬龍氏原作の”百億の昼と千億の夜”や、同じくレイ・ブラッドベリ氏原作の”ウは宇宙船のウ”などからコツコツと読み進めて、現在は”銀の三角”で停滞しています。

萩尾望都さんのSF世界について

萩尾望都さんのSF世界を語るために、短編集=金銀砂岸より”酔夢”のシナリオ進行を例に挙げ、ごく簡単に紹介します。

【女は、夢にでてくる黒い長髪の男に会いたいと願う。占い師によると長髪の男には「会える」。長髪の男は女の事を「知らない」。女が想いを伝える事は叶わず、女は男の目前で「うつ伏せて死ぬ」。占いの結果を聞く一部始終を、レム博士は頻繁に夢に見る。レムは月出身で、木星衛星・イオの調査チームに所属している。イオの調査チームに新たに参加したサファーシュ博士は地球出身で、長髪の男である。サファーシュはレムと会った直後から、レムと過去に何度も会っていると告白する。レム博士の表現体はmale(男性)だが、染色体はXXだ。サファーシュはレムと共有している夢の内容に不満を抱いており、変革を望んでいる。レムとサファーシュはイオへの上陸調査に加わるが、その際イオに大きな地殻変動が発生する。】

おおむねこのような感じです。

乱暴に、キーワードに当てはめてみれば「夢の暗示」「ループ世界」「ボーイズラブ」といった言葉でくくる事も可能です。

可能ですが、実際に作品を読めばそこから伝わるイメージは人によって、また読むタイミングによって千変万化することでしょう。

最近”酔夢”を読んで抱いた感想は「木星付近の重力下・磁力下で人間の意識はどう変質するだろうか?」

私が最近”酔夢”を読んで抱いた感想は「木星付近の重力下・磁力下で人間の意識はどう変質するだろうか?」という事です。

そもそも「意識」なんて事象は、現代(いま2017年です)においてもまだオカルトの領域と大きく接しているので、どんなに考えても妄想の域を脱することはできません。

意識のロケーションが大脳皮質に絞られてきたといっても、意識が人間の肉体を離れて存在する可能性も完全に否定できたわけじゃありません。

そもそも常人に理解できるのは「ヒト型の意識」程度のコトかもしれません。

映像化の秀逸な元ネタにもなるはず

私にとっては、読むたびに妄想をしてしまうのが萩尾望都さんのSFです。

妄想の世界は果てしなくとりとめなく拡大し、下手をすれば日常生活に影響が出ます。

妄想してしまうのはあくまで私の胡乱な頭脳であって、他の方が読めばラブロマンスにもなるし、古典的悲劇にもなるし、映像化の秀逸な元ネタにもなるでしょう。誰か映像化するべきです。

漫画作品に触れなければ、伝わらない

”酔夢”について、あくまで私見オンリーでご紹介しました。

シナリオ進行について要約めいた事も書きましたが、これはあくまでテキストに過ぎず、実際に漫画を読んでみなければ「実害」はありません。

オリエンタルな雰囲気を身に纏う美青年、繊細で柔らかなフォルムの美少年、読み手に全くストレスを与えず時間や空間を行き来し、時にそれを破壊する構成美。

こんな風にテキストで如何に説明しようとも、所詮はテキストです。

作品に触れなければあくまで特性の理解をする程度にとどまるハズです。

他のSF作品”A‐A’(エー・エーダッシュ)”について

「理解」という言葉を出したところで、他のSF作品”A‐A’(エー・エーダッシュ)”についても触れておきます。

【複製人間であるアデラドは、プロキシマ星系の調査に「再派遣」され、氷に覆われた惑星へ降下します。アデラドが派遣された調査チームのメンバー・レグは、過去にアデラドと恋仲でしたが、アデラドはその事を知りません。惑星に直接降下するミッションは危険が大きく、前回に派遣された旧タイプのアデラドは惑星で消息不明になっていました。レグが恋していたのは旧タイプのアデラドでしたが、3年ほど若返った「新しいアデラド」にどう接したら良いのか理解できず、苦悩します。】

私が冒頭シーンを解説するとこんな感じです。

”酔夢”との共通項も複数ありますが所詮テキストでの事です。私には理解できない事があります。

萩尾望都さんがこれらの作品群を生み出したのは、果たしてSFがしたかったのか、それともラブストーリーを描きたかったのか?それとも他の意図があったのか?

まとめ

萩尾望都さんのSF世界が、根本的にどのような狙いで構築されているのか、私には理解不能です。

ラブコメにしてはSF考証が過分にちりばめられており、かといってSFとしては叙情的なタッチが前面に出すぎています。

ファンの方には”メッシュ”のような、パリの街で物憂げに過ごす美少年がひたすら見たい人も少なくないハズです。

それでも数奇な運命を担った数々のキャラクターが、国家も星系も飛び越えて繰り広げる愛憎劇は、コミック界でも特異な存在感を放っている事、そして私を魅了してやまない事は間違いありません。